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2023.04.21

妊婦さんも必見!!サイトメガロウイルスって知っていますか?

今回は,妊婦さんや赤ちゃんに関わる色々な立場の方から注目されているサイトメガロウイルスについて桒原先生に解説してもらいました.

赤ちゃんに関わる方々,知識が聞こえも守ります.ぜひお読みください.

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桒原先生スライド(きこえエール訪問支援員研修会)

注目されているサイトメガロウイルス

 ST学科教員の桑原です。2023年の3月18日のNPO法人きこえエール(関連記事はこちら)の訪問支援員研修会がありました。最近、親御さんからご質問が多くなってきていた先天性サイトメガロウイルス感染症と難聴について、私、桑原が情報提供をさせて頂きました。

 ちょうど2023年3月7日にAmerican Academy of Audiologyアメリカ聴覚士学術振興会から Position Statement on early identification of Cytomegalovirus in newborns「新生児のサイトメガロウイルスに関する意見書」が出ました。ですので、全世界で意識が高まっているのだなと感じています。

サイトメガロウイルスとは?

 このサイトメガロウイルス(CMV)は私たちの生活している周辺のどこにでもいます。

桒原先生スライド(きこえエール訪問支援員研修会)

たいてい の場合、産まれてしばらくすると感染し、その後、何の支障もなく、ウイルスと共に健康に過ごす方がほとんどですので、気づかず感染している人は大勢います。そして、すでにサイトメガロウイルスに感染している健康な女性が妊娠してもお子さんに感染させることはありません。赤ちゃんも健康であれば、サイトメガロウイルスに感染しても平気です。ですが、日本のようにどこも抗菌されて清潔な空間で育つと、大人になるまでサイトメガロウイルスに感染しない方が多いのです。

サイトメガロウイルスの症状とは?

 問題は妊娠初期の妊婦さんが初めてサイトメガロウイルスに感染すると妊婦さん自体は元気なので感染したことには気付かず、お腹の胎児に移行感染してしまうことです。流産する場合もあります。またサイトメガロウイルス感染のため、小頭症、水頭症、重度難聴、SGA(正規産にもかかわらず小さく生まれた赤ちゃん)などいくつもの症状を抱えて産まれてくる赤ちゃんもいます。両耳難聴または片耳難聴など難聴だけ持って生まれてくる赤ちゃんもいます。

 もう一つ難しいのは、ウイルス感染がある赤ちゃんでもまったく何の症状もなく健康に産まれてきて、後になってから難聴や発達障害が出てくる場合もあります。

サイトメガロウイルスの予防法?対処法?

 現在では、サイトメガロウイルスのワクチンはありません。抗体検査はできますが、ワクチンがないので、日本も世界でも妊婦に対して抗体検査をしません。アメリカも妊婦の抗体検査はせず、新生児に対してもサイトメガロウイルスに感染しているか積極的に検査をしないそうです。

 しかし最近日本では、新生児がサイトメガロウイルスに感染しているかを検査する自治体が増えてきました。というのは、先天性サイトメガロウイルス感染症と分かって早期に治療を始めれば、難聴の進行が止められる可能性が大きいと考えられるからです。治療には副作用があり大きなリスクを伴いますので、新潟県は現在のところ、小児科を中心に産科、耳鼻科も入って慎重に話し合いが続けられています。また新しい情報があるかもしれません。

 こんな風に私たち、STは他の専門家たちと共に日々、勉強を続けています。勉強は楽しいし、世界の人たちとの情報交換も楽しいです。行政の人たちに働きかけて、難聴児たちが幸せに過ごせるようにすることも大切な仕事だと思っております。私も勉強を一生懸命続けていきたいと思っています。ぜひぜひST学科に私に会いにおいでください。

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桒原先生,ありがとうございました!

色々な症状があるにもかかわらず積極的な予防が難しいサイトメガロウイルスですが,適切な早期治療が聞こえを守るために,効果的なのですね.まずは関係する方々に,そのことを知っていただけると良いですね.

STは,言語聴覚士のことで,コミュニケーションとのみ込み(嚥下)を支える医療系国家資格のいる職業です.Speech-Language- Hearing Therapistsの略です.

新潟市北区島見町にある新潟医療福祉大学の言語聴覚学科広報ST Kouhouよりお届けしました.

#教員の活動