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2023.02.14

臨床心理士の視点からみたTVドラマ『リエゾン』の感想④

『リエゾン』第4回が放送されました.

『リエゾン』は,クリニックや支援学級で働く言語聴覚士が出演する漫画が原作のTVドラマで,1/20(金)より始まりました.

(金曜ナイトドラマ『リエゾン』についてはこちらをご参照ください.)

臨床心理士としてスクールカウンセラーもされている石本先生がドラマを見てコメントを寄せてくださいました.

石本先生のご紹介はこちら

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 摂食障害の高校生が今回のテーマでした。特に印象に残ったシーンをとりあげてみます。
 初回の診察場面で、太ることを恐れている患者さんに医療者が「大丈夫、あなたは太っていないよ」という言葉をいいかけて止める場面がありました。「大丈夫、あなたは太っていないよ」。これは「痩せる必要ないよ」というメッセージでもありますよね。BMIも極端な数値ですから、身体的な健康の側面からみれば、確かに太っていません。これ以上痩せる必要はまったくありません(これ以上痩せると危険です)。しかし、この言葉が、この時点での患者さんの心に響く可能性は低いかもしれません。患者さんの食行動の変化に結びつく可能性は低いかもしれません。なぜでしょうか。 ドラマの中で説明されていたように、食事を制限して痩せているということが、ご本人にとっての自尊心の源になっているのですね。今回の患者さんでいえば、ダイエットすることで友人ができた。SNSでフォロワーからの称賛のコメントが得られる。ダイエットして痩せている自分に価値がある、と感じている。そこに「大丈夫あなたは太ってない、痩せる必要ない」というメッセージは、この時点での患者さんの心にはフィットしないですよね。 このように、患者さんを安心させようとした言葉、客観的な正しさを伴った言葉が患者さんの気持ちに沿わずに治療に結びつかないことが、実際の臨床現場ではあります。 
 また、今回の高校生は過食嘔吐もありました。これは周りには隠したいことですね。痩せている自分は認めることができる(周りから称賛される)が、過食嘔吐している自分は、周りには隠したいんですね。実際にドラマの中盤の診察場面では「治療したくない、治療していることが友人にばれるのは嫌」と患者さんは言っています。それに対する医療者の言葉が印象的でした。「自分の病気や治療のことを友人に話すことは、とっても怖いですよね。」これは、この時点での患者さんの実感にフィットする言葉だったかもしれません(表情からそのような感じを受けましたが、本当のところはわかりません)。さらに、医療者は「あなたはひとりではありませんよ」と伝え、患者さんとの感情的な繋がりを大切にしようとしています。 患者さんとの感情的な繋がりは、心理的な支援を実践するにあたって重要な要素ですね。
 そして、ドラマの終盤では、「食べ吐き」の現場を友人に見つかってしまうという場面がありました。自分が隠したかったことが友人に見つかってしまう場面です。ここで患者さんは「食べ吐きをやめられない自分が大っ嫌い」と自身のネガティヴな側面を友人に吐露します。この場面における患者さんと友人のやりとりも大きな意味がありました。ドラマ中盤の診察場面が、このシーンの伏線になっていたようです。
 最後に、今回のドラマでも描かれていたように、親は子どもの問題に関して自責感や恥の感情を抱えて苦しんでいることがあります(そのような感情は表に出てこないことも多いですが)。医療者は、このような自責感や恥の感情にも目を向け、配慮していくことが大切です。

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石本先生,ありがとうございました.

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STは,言語聴覚士のことで,コミュニケーションとのみ込み(嚥下)を支える医療系国家資格のいる職業です.Speech-Language- Hearing Therapistsの略です.

新潟市北区島見町にある新潟医療福祉大学の言語聴覚学科広報ST Kouhouよりお届けしました.

#小児発達