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2024.10.02

補聴器を考えたらまず耳鼻科で相談しましょう

こんにちは.

本学科所属の佐藤克郎先生は,学科の授業やゼミをご指導されていますが,耳鼻科医として患者対応もされています.克郎先生にそのお仕事の一つ,補聴器についてお聞きしました。

克郎先生とゼミ生

補聴器って何?

 補聴器は単純に言えば「外界の音を増幅して鼓膜に届ける」医療機器です。その歴史はベートーベンが使っていたラッパ型に始まりますが、現在は非常に精密な工学機器に発展しています。

 他に聞こえに関する医療機器としては人工内耳や人工中耳がありますが、どれを使うかは耳鼻科医が慎重に評価をして判定します。判定を間違うと逆効果になりかねないので、聞こえで困った方は必ず耳鼻科で相談することから始めてください。

患者さんの相談内容は?

 耳鼻科の外来で聞こえに困る患者さんから最初に質問されることは、その理由です。耳鼻科医がまず鼓膜の診察をして、聴力検査とCT検査やMRI検査をすることで病気の診断がつきます。

 次に多いのは、聞こえを治す治療はあるのかどうかという相談です。病気によっては手術や薬で聴力が改善することもあるので、治療の結果により補聴器は要らなくなります。

 さらに補聴器は自分にとって有効かどうかという質問もよく受けます。患者さんの病気により補聴器はたいへん便利なこともありますし、逆にむしろ有害な場合もあります。

 そして、補聴器はどれを選べばいいかという相談も受けます。総合病院耳鼻科や耳鼻科開業医では、おおむね公益財団法人による認定補聴器技能者と提携しています。そのような耳鼻科では外来診療で耳鼻科医と認定補聴器技能者とやり取りをしながら最適な補聴器を選定できるので、ご家族は「敬老の日に既製品の補聴器をプレゼントする」「補聴器販売店への来店を勧める」などではなく、まず耳鼻科受診を助言してください。

 また、地方自治体には各種の補聴器に関係する助成制度がありますが、患者さんはその申請ができるかどうかという相談も受けます。これらの制度は医師なら誰でも認定や申請ができる訳ではなく、法律または学会で認定された耳鼻科医が対応する必要があります。特に身体障害に関する認定は「身体障害者福祉法第15条指定医」でなければできません。

耳鼻咽喉科頭頸部外科学会認定専門医とは?

 ここまで「耳鼻科」と書いてきましたが、医学的な正式名称は「耳鼻咽喉科頭頸部外科」といい、国内の耳鼻科医は「日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会」という学会に所属しています。同学会は明治26年に創立された伝統ある組織で、現在約1万人の医師の会員がいます。耳鼻科医として規定の臨床経験と研究業績を満たすと「日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会認定専門医」の受験資格が得られますが、これは医師国家試験よりも相当にハードルの高い試験です。余談ですが、私は1992年度の日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会認定専門医試験で全国1位の成績で合格しました。

 他に日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会が認定する補聴器に関連する資格として「日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会認定補聴器相談医」があります。両認定専門医資格とも、認定試験合格後も定期的に実績を申請して更新する必要があり、日常の情報収集と学習は欠かせません。

STをめざす在学生・高校生へメッセージ

 日本の言語聴覚士は言葉・聞こえ・飲み込みの不自由、すなわち「言語・聴覚・嚥下障害」という臨床業務を行うことを諸外国の同種資格以上に幅広く期待されています。また一方で、聴覚を専門とする言語聴覚士は国内で圧倒的に不足しているのが現状です。補聴器はたいへん高度な工学機器を人体に適応させるものなので、言語聴覚士という専門職による「慣れとコツをつかむ練習」が必要です。現在のわが国の耳鼻科医と言語聴覚士の人手不足のために、箪笥に眠ってしまう既製補聴器が数多くある状態は悩ましい限りです。 言語・聴覚・嚥下障害はいずれも耳鼻科と密接な関係がありますが、耳鼻科医としては聴覚が得意な言語聴覚士が1人でも増えてくれることを切に願っています。私が日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会認定専門医の教授として在職しているうちに、補聴器をはじめとした聴覚医療を志す高校生が新潟医療福祉大学言語聴覚学科に入学してくれることを期待します。

克郎先生,ありがとうございます.

STは,言語聴覚士のことで,コミュニケーションとのみ込み(嚥下)を支える医療系国家資格のいる職業です。Speech-Language- Hearing Therapistsの略です。

新潟市北区島見町にある新潟医療福祉大学の言語聴覚学科広報より ST kouhouがお送りしました。

#教員の活動