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2023.02.21

臨床心理士の視点からみたTVドラマ『リエゾン』の感想⑤

『リエゾン』第5回が放送されました.

今回のテーマは,ヤングケアラーでした.言葉を直訳すると若い介護者ですが,聞きなじみのない方も少なくないのではないでしょうか? 臨床心理士としてスクールカウンセラーもされている石本先生に質問をしてみましたので,ご報告します.

石本先生のご紹介はこちら

『リエゾン』は,クリニックや支援学級で働く言語聴覚士が出演する漫画が原作のTVドラマで,1/20(金)より始まりました.

(金曜ナイトドラマ『リエゾン』についてはこちらをご参照ください.)

ST Kouhou:今回のテーマは,ヤングケアラーでした.「ケア」って何でしょう?

石本先生:ドラマの中では,病気の母親の世話をしている小学生,その子が通う小学校に勤務するスクールカウンセラー,この2人のやりとりが中心に描かれていました.今回視聴して,私の頭には「ケアする人がケアされること」という言葉が浮かびました.日常的に「ケアする」立場の人がいます.今回の2人はまさにその立場にある人です.ちなみに私自身の仕事も「ケアする」立場といえます.
 私は「ケアする」人には「ケアされる」という体験(ケアされているという実感あるいはケアされたことがあるという確かな感覚、といいますか・・・)も貴重ではないかと思っています.そして,そのことが今回のドラマを通じて描かれていたようにも思いました.スクールカウンセラーは,自身も幼いころに病気の母親の世話をしていた経験があります.スクールカウンセラーは自分のこれまでの歴史や様々な想いを同じ職場の児童精神科医に打ち明けます.児童精神科医は、その歴史や想いを受け止め,支えます(文字にすると簡単ですが・・・).おそらく,スクールカウンセラーにとっては,受け止め支えてもらえている感じ,つまり「ケアされる」体験になっているのでは,と想像しました.この体験は,スクールカウンセラーが積極的に安定的に目の前の人を「ケアする」ことに寄与しているのでは,と想像しました.

ST Kouhou:ケアされた経験が,ケアする原動力になるのですね.ドラマの中でヤングケアラーである小学生ははじめカウンセラーが提示するケアに対し拒否的でしたが,先生はどう思われましたか?

石本先生:ヤングケアラーとしてドラマの中で描かれていた小学生に対し,スクールカウンセラーは積極的に「ケアする」ことを試みていました.しかし,その行為はなかなか届きませんでした.小学生は「困っていません,大丈夫です」と言って「ケアされる」ことを求めていないようにもみえました.ここからのスクールカウンセラーのこの子に対する関わり方は,とても積極的でした.(ドラマの中の登場人物のセリフで「人にはそれぞれ歴史がある」というものがありましたが,スクールカウンセラー自身の歴史が,目の前の人への関わり方にも表れる様子がドラマでは描かれていたように思います.私も今回のドラマを視聴し,自身の歴史を振り返りました.)

 また,ドラマの最後のシーン.この子が将来の夢を記述する場面で,「ケア」という文脈とは離れた夢を記述していたことがとても印象的でした.

ST Kouhou:石本先生,ありがとうございました.

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STは,言語聴覚士のことで,コミュニケーションとのみ込み(嚥下)を支える医療系国家資格のいる職業です.Speech-Language- Hearing Therapistsの略です.

新潟市北区島見町にある新潟医療福祉大学の言語聴覚学科広報ST Kouhouよりお届けしました.

#小児発達