こんにちは、海馬です
一昨日のブログ記事で雑談力の本を紹介しました。
今日は、それに関連したもう1冊の本を紹介したいと思います。
「なぜ、この人と話をすると楽になるのか」 (吉田尚記、太田出版、2015)
「非戦のコミュニケーション」という独特の考えを武器に、コミュニケーションという「ゲーム」をすることが大切と、著者は説いています。
コミュニケーションという戦いに勝とうとするからうまく行かないという意味合いですね。というか、そもそもコミュニケーションで勝とうとすること自体が難しい愚かなことで、コミュニケーションは人と楽しむゲームだと割り切ることが良いということです。
私たち言語聴覚士も、ときどき、患者さんに対してカウンセリング的な会話をすることがあります。そのときに、正しい知識やより良い結果を求めることばかりを最優先してしまうと、結局、うまく行かずに空回りすることがあります。
まずは、相手と「気持ちを共有」し「会話を楽しむ」ことが、もっとも大切です。
また、著者は興味深い話もしています。
それはいわゆる「コミュ障(コミュニケーション障害)」についてです。
コミュニケーションは難しいもので、最初からうまくできる人はいないし、そういう意味ではコミュ障ということば事態がおかしいという旨の説明をしています。
(注:ここでいうコミュニケーション障害は、私たち言語聴覚士が対象とする医学的な障害とは異なる、社会的現象を表すことばです)
コミュニケーションは初めから難しいのが当たり前なのだということは、劇作家の平田オリザさんが「わかりあえないことから -コミュニケーション能力とは何か」でも主張しています。
難しいから悲観的になる必要があるという意味ではなく、逆に、難しいものだからこそ、楽観的にコミュニケーションを楽しもう!ということですね。ポジティブ・シンキングです!
インターネットで何でも答えがすぐに見つかる現代。
正しいことや正答だけが大切にされているような気がします。
大事なことは、正しいことや正答というのは、そんなにすぐに分かるものではないということ、むしろ、それが何であるかを知ることよりも、それに到達するまでの試行錯誤する過程こそが重要である、そんなことが改めて確認された良書でした。