今回は赤ちゃんと聴力検査のお話です.
私たちが言葉をおぼえるとき,大部分は耳から聞いた音を手がかりにしています.そのためこれから言葉をおぼえる赤ちゃんにとって、聴力はとても重要なものです.
もし生まれつき聴覚障害がある場合は,ことばをおぼえるための重要な手がかりが少なくなってしまい,ことばの発達が遅れてしまいます.
そのためには,すべての赤ちゃんにできるだけ早く聴力検査を行い,聴覚障害があるかないか評価し,支援が必要かどうか判断する必要があります.このような聴力検査を「新生児聴覚スクリーニング検査」といいます.
この検査は,日本では2000年から実施されています.本学がある新潟県では,2014年6月からすべての分娩施設で検査が実施できるようになっています.
しかしながら,検査の実施状況は自治体によって差があります.検査を受ける補助金も自治体によって異なります.2019年の調査では,新生児の1割が検査を受けていないか,受けたかどうか不明であることが明らかになりました.
今回厚生労働省は,この新生児への検査の基本方針案を発表しました.
この方針で厚生労働省は,生まれた子どもが生後1か月までに医療機関で聴覚検査が受けられる体制を都道府県に求めることを柱としています.
難聴は出来るだけ早期に発見し,人工内耳や補聴器の利用,手話など様々な形で言語の発達を促すことが重要です.方針では,公費負担による検査を推進するほか,妊婦健診などで検査の情報提供を行うことも盛り込まれました.
方針ではさらに,難聴が疑われた場合遅くとも生後3か月までに精密検査を行い治療や教育につなげること,都道府県ごとに関係者による協議会を設置して情報を共有し,子どもと家族を途切れず支援できる体制づくりを目指すことも記載されています.
もちろん言語聴覚士も,この体制の大切な一員です.
現在も耳鼻科のある病院に勤務する言語聴覚士は,上記の精密検査を行っています。
今後支援体制が構築される中で,言語聴覚士も難聴児の療育施設にて保健,医療,福祉機関との連携に関わる連絡や調整をする役割を担う「乳幼児教育相談マネージャー」として活躍する可能性もあります.
本学では桒原桂講師が,新潟県の新生児聴覚スクリーニング検査を研究対象としています.精密検査が必要となったお子さんの,お誕生から小学校に入学するまでの支援体制について研究しています.
お子さんのことばの発達に重要な意味を持つ新生児聴覚スクリーニング検査は,今後ぜひ広まっていくこと、それに伴い聴覚障害分野で活躍する言語聴覚士が増えていくことを期待したいですね!
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