今年度の卒業研究発表会の様子をお伝えするシリーズ、第8回目は内山ゼミの卒業研究発表を紹介します。
内山ゼミの卒業研究テーマは下記の通りです。
- 高血圧がアルツハイマー病患者の臨床像に与える影響
- アルツハイマー病における被害妄想,誤認妄想と介護負担について
- アルツハイマー病患者のアパシーが介護負担に及ぼす影響
- 難聴がアルツハイマー病患者の臨床像に与える影響:介護者への構造化インタビューで評価した難聴に基づく検討
ゼミ担当教員の内山信准教授の専門は,神経心理学,特に認知症に関連する神経心理学です.学生の発表も認知症に関連するテーマとなっています.
発表の中の一演題、「アルツハイマー病患者のアパシーが介護負担に及ぼす影響」を紹介します。
アパシーとは,趣味や社会活動に対する興味を失ったり,何事にも意欲がわきにくくなったり,自分から行動しなくなったりする症状です.アルツハイマー病ではよくみられる症状です.アパシーは認知症が重度になるほど生じやすくなるとの報告もあります.
このアパシーの症状が介護にどの程度影響するのかが,今回の研究テーマです.本学の関連施設である新潟リハビリテーション病院のものわすれ外来に来られた患者さんに行った認知機能検査の結果や,介護者の方に行ったアンケート調査などをもとに検討しました.
その結果,アパシーの症状を負担と感じる介護者は6割近くいた一方,負担を感じない介護者も4割程度いました.負担に感じる介護者の性別では,女性の割合が多い結果となりました.また,アパシーとうつ状態は別のものですが,既存のアンケート方法では,介護者がアパシーの症状をうつ状態として回答した可能性も考えられ,アパシーの評価の難しさが感じられました.
アパシーは認知症の他に,交通事故や転落事故などで脳が損傷された場合も生じることがあります.認知症と異なり事故による脳損傷では,積極的なリハビリテーションが推奨されますが,アパシーのある患者さんはリハビリテーションへの意欲がわきにくくなります.リハビリテーションに携わる言語聴覚士は,アパシーの症状をよく把握し,アパシーによる介護負担をご家族に説明できる必要があります.
次回は山岸・伊藤ゼミの発表を紹介します!
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