今回は一般の方向けに開催された,失語症の講習会についてのお話です.
失語症の方が必要な支援とは?
失語症の方を支援する人というと,まず挙がるのが本学科の学生が目指す言語聴覚士です.
しかし言語聴覚士が失語症者の生活すべてを支援するのは限界があります.
たとえば日々の生活では,買い物や役場へ行く際,店員さんや役場の窓口の方とコミュニケーションをとる必要があります.失語症者は言語障害によりコミュニケーションをとるのが難しいのですが,言語聴覚士が外出のたびに付き添って支援することはできません.結果として,失語症者は外出の機会が減りがちとなり,不自由な思いを抱えています.
言語聴覚士以外でも,失語症者の日常のコミュニケーションを支援することはできないか?
そのようなニーズに答える事業として始まったのが,「失語症者向け意思疎通支援者養成事業」です.
失語症者向け意思疎通支援者養成事業とは?
この事業では一般の方を対象に,失語症者の方とコミュニケーションを取るために必要な知識やスキルに関する講習会を開催をします.講習会を受講した方は,「失語症者向け意思疎通支援者」として各自治体に登録されます.そして支援を要請する失語症の方のところへ派遣され,失語症の方の外出先でのコミュニケーション支援を行います.
失語症者の方とコミュニケーションを取るために必要な知識やスキルを身につける,というと,それって言語聴覚士と同じじゃないの?この事業で養成される支援者と言語聴覚士はどう違うの?と疑問に思うかもしれません.
一番の違いは,失語症の評価や訓練を行うかという点です.
講習会で養成される支援者は,支援の対象である失語症の方の症状について詳しく評価したり,症状を改善するための訓練を行うことはありません.
支援者はあくまで日常のコミュニケーションが少しでも円滑に進むように支援することを目指します.
支援のスキルは様々です.スキルの一つとして筆談がありますが,会話の内容をただ書き取るだけでは支援になりません.ポイントとなる部分だけ抜粋する,文ではなく単語で表現する,記号や簡単な絵で表現するなど,失語症者支援に特化した筆談スキルが必要になります.
講習会の内容は,コミュニケーションスキルの他,失語症の方に関係する福祉制度や,体に麻痺のある失語症者の身体介助のスキル,さらにショッピングセンターや失語症友の会での演習など,多岐にわたります.そのため講習会は複数回に分けて開講されています.
講習会の主催は各自治体であり,講習会は原則無料で受講できます(交通費や通信費は自己負担).
支援者養成のための講習会で本学科の教員がスタッフとして参加しています!
本学がある新潟県でも,昨年度から事業が本格化し,今年度から講習会もスタートしました.
本学科教員の田村俊暁助教は,講習会事務局として取りまとめを行いました.また,伊藤さゆり助教,そして本学科に1月から着任した谷麻美助手も,講習会で講師を務めました.
言語聴覚士を養成している本学科の教員が新潟県の講習会に協力することで,本学科と失語症者をとりまく地域の方々との結びつきを強めていきたいと思います.
また,講習会では教員だけでなく,本学の学生も様々な形で参加しています.次回は学生の取り組みについて紹介します!
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