本学科に2022年1月から,新しい教員が着任しました!
谷麻美助教です.
谷先生に早速インタビューを行いました.
言語聴覚士としての谷先生
―これまでの経歴を教えてください
新潟市西区にある急性期病院で言語聴覚士として勤務していました。急性期病院というと入院期間は短くなりがちですが,成人病に特化して地域に根差した病院のため、繰り返し入院される患者さんも多く、急性期ながら一人の患者さんと向き合う期間は長かったです。
―一口に急性期病院でもいろいろな病院があるのですね.先生はどのようなリハビリを行ってこられたのですか?
患者さんは神経内科、脳外科、呼吸器科から紹介された方が主で、失語症や注意障害などの高次脳機能障害、認知症、発声発語機能障害、嚥下障害、廃用症候群と,様々なリハビリを行っていました。
神経難病をかかえる患者さんにも,入院中や・外来を通して長いスパンでリハビリを行っていました。他にも、腎機能障害や糖尿病や心疾患などの生活習慣病と言われる病気を併発している方のリハビリも,リスク管理をしながら行っていました。
―非常に多岐にわたるリハビリに従事されていたのですね.先生が言語聴覚士を目指した理由を何だったのでしょうか?
国際交流に関心があり,大学は国際学部に進学しました。特に外国語の言語習得に興味があり,卒論は「第二言語習得方法」について書きました。大学卒業後の進路を考えた際、企業ではなく病院で働きたいと思うようになりました。多くの企業では,他の企業との競争を意識して働くことが求められます。一方で病院では,競争よりも協力が重んじられます。他職種と連携するチーム医療もその一つですね。私は大学生のときに入院したことがあるのですが,そのときに企業と病院とで働き方に違いがあることを感じ,自分には病院の方の働き方が合っていると思ったのです。そこで、自分の関心である「言語習得」と「病院勤務」の2つを組み合わせて職業を検索したところ,「言語聴覚士」という職業に行きつきました。大学卒業後に言語聴覚士の養成校に入学しました。
教員・研究者としての谷先生
―言語の習得への関心に加え,病院での働き方を知ったことが,言語聴覚士を目指されたきっかけとなったのですね.今回先生は,病院の臨床から教育・研究の場へ入られるわけですが,これはどのような理由からなのでしょうか?
病院で個別のリハビリを行うのも好きなのですが、もっと多くの患者さんにとって役立つ仕事をしたいと思ったのが,言語聴覚学科の教員となった理由です。言語聴覚士の養成や研究を通して多くの患者さんの力になっていきたいと考えております。
―学生への教育や研究活動は,臨床に比べ患者さんに直接触れ合う機会は減りますが,間接的により多くの患者さんの利益につながっていきますね!先生は小児の領域で研究されるそうですが,研究内容を教えてください.
今春から大学院に進学するのでまだ明確には決まっていませんが、小児の発達領域の基礎研究を行っていきます。実際の患者さんを対象に研究をするのが臨床研究ですが、基礎研究は物事の仕組みを掘り下げて探求していきます。これから所属する研究室では、脳の神経回路が柔軟に変化する生後すぐの時期「臨界期」に起こる脳内の物質移動の解明などを行っています。私の研究では,自閉症に関与する特別な遺伝子を持つマウスに協力してもらい研究していくことを検討しています。
さきほどお話したように私の臨床経験は成人領域のみですので、小児領域は研究も臨床もこれから勉強するところです。本学科の吉岡豊准教授の下で,本学科付属施設の言語発達支援センターでの臨床をさせていただきながら、小児の基礎研究と臨床を融合させていきたいとも考えています。
谷先生にとっての言語聴覚士の魅力とは?
―基礎研究が発達支援センターの臨床と融合していったら素晴らしいですね!先生にとっての言語聴覚士の魅力とは何でしょうか?
他者をこんなにも直接的に支援できる職種って少ないと思います。一緒に訓練し、笑顔が見られた時の喜びは感動級です。また、自分の色々な経験が全て言語聴覚士の基礎になります。専門的な知識を身につけ,日々更新していくことはもちろん必要ですが、ニュースや最近の話題などの情報や,人生の様々な場面で経験したこと,そのときの感情なども臨床で役立ちます。例えば言語障害により言葉が出にくくなっている患者さんが,何を言わんとされているのか汲み取れたらいいですよね。患者さんの中には少しだけ言葉が出せるときもありますが,そのわずかな言葉をヒントとして,患者さんがおっしゃりたいことはこれかな?あれかな?と,言語聴覚士は推測します。この推測するときに,情報や経験を役立てることができます。
―具体的な会話の例を教えてください.
病院で失語症の患者さんと東京の話題で会話していたとき,患者さんが「あれは、ほら、あの山と同じなんだ…」とおっしゃったことがありました。…これだけで患者さんの言わんとしていることが分かりますか?新潟市の方が「あの山」とおっしゃるときは,「弥彦山」や「角田山」かなと思いました。これは新潟市に住んでいれば経験的に推測できることです。そして東京にあり,弥彦山と「同じ」もの,つまり共通点のあるもの…実はこの患者さんは,「東京のスカイツリーは,弥彦山と同じ高さなんだよ」とおっしゃりたかったのです。これは弥彦山やスカイツリーの知識がないと推測できません。
―こちらの推測が当たったときの患者さんの嬉しそうな顔を見ると,コミュニケーションの重要性を実感します。言語聴覚士を目指す高校生へメッセージをお願いします!
まず、こんなにも素晴らしい言語聴覚士という職業を知っていることがラッキーです。言語聴覚士はコミュニケーションや食事の他,何かを記憶したり注意を向けたりといった,人が生活していくのに必要不可欠な機能に障害が起こった患者さんに対し,回復へのお手伝いをします。ぜひ一緒に言語聴覚士を目指しましょう!!
谷先生は本学科Instagramを担当されています!
―最後に,谷先生のご趣味を教えてください。
趣味は写真撮影です。一眼レフカメラで、主に子ども達の写真を撮っています。写真やカメラにご興味がある方いらっしゃったら、お話出来るとうれしいです.
ここで少し宣伝ですが、Instagram(@nuhw_st)で皆さんのお写真を募っております。下記タグをつけて投稿くださいね。応募されたお写真の中から、選りすぐって本アカウントで紹介(Feature!!)させてもらいますよ。
学生生活のお写真→#student_life_nuhw_st
お食事・お話しなどを言語聴覚士が支援している場面のお写真→#言語聴覚士が支えるもの
谷先生,インタビューありがとうございました!
谷先生のデスクは本学科研究棟4階の合同研究室にあります.学生の皆さんはぜひ谷先生を尋ねてきてください!
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