こんにちは。STkouhouです。
以前のブログで、研究費の一つ、科研費(科学研究費補助金)と、
科研費を獲得した当学科の教員の研究について、ご紹介しました。
富澤晃文准教授が獲得した科研費研究についての記事はこちら
田村俊暁助教が獲得した科研費研究についての記事はこちら
今回は当学科の内山信講師が科研費を獲得した研究についてご紹介します!!
ー今回採択された研究テーマは、
「難聴が認知症発症後の患者の臨床像に及ぼす影響の検討」です。
高校生の皆さんには聞きなれない言葉がいくつか入っていますが、
まず、“難聴”とは何ですか?
“難聴”とは、聴力が低下して、人の話し声やテレビの音のほか、電話の呼び出し音などの身の回りの音が聞き取りにくくなる状態です。
「ご高齢の方は耳が遠い」というイメージをお持ちの方も多いと思いますが、実際に65歳以上の高齢者の半数近い方は、程度の差はあれ、聞き取りにくさがあるといわれています。
近年では高齢の方が増えたため、テレビの音がすぐ近くで聞こえる手元スピーカーが人気のようです。
―では、“認知症”とは何でしょうか?
私たちは普段何気なく話したり、計算したり、覚えたり、注意を向けたり、見たものが何か認識したりしています。
これらは認知機能という脳の働きが適切に働いてくれることによって行えるものです。
脳の神経細胞が弱ったり、死んでしまったりすると、これらが適切に行えなくなります。
これが認知機能障害です。
この認知機能障害によって普段の生活に支障が生じた状態が認知症となります。
―では、改めて先生のテーマについて教えてください。
実は、ほんの数年前までは、難聴と認知症とに関係があるということは、ほとんど知られていませんでした。
耳と脳ですから、病院の診療科も違うわけですし。
しかし、2017年に報告された、認知症を起こす原因を調査した研究によると、高血圧やうつ病などいくつかの原因の中で、最も認知症を起こすリスクの高い原因は難聴であることが発表されました。
最初は私もこの結果に驚きましたが、今ではこのことは定説となっています。
―なるほど。難聴は認知症の原因になるのですね。
はい。なぜ難聴だと認知症になりやすいのか。
そこがまだわかっていないので、今、盛んに研究されています。
しかし、多くの研究者は患者さんが認知症になるまでの期間に注目しており、認知症となった後のことはほとんど注目されていません。
難聴の方は必ず認知症になるという訳ではないのですが、認知症の患者さんのうち、難聴もある患者さんはかなり多いのではないかと考えられます。
そこで、私は認知症となった後の患者さんの認知機能障害などの症状には、難聴がどのように影響を与えているのかを明らかにしたいと考えました。
―具体的にはどのようなことを調査するのでしょうか。
はい。まず、認知症の患者さんに聴力検査を行い、難聴のあるグループとないグループに分けます。
この2つのグループ間で、記憶力や注意力などの認知機能、妄想やうつなどの精神症状、社会活動や家庭内の状況などの日常生活上の機能についての検査スコアを比較します。
この比較から、難聴のある患者さんにだけ現れる症状やより悪化する症状がないか探ります。
―この研究によって、どのような成果が望まれるのでしょうか?
現在でも、認知症の検査として聴力検査を行うことはほとんどありませんので、難聴に影響される認知症の症状が見いだせた場合は、認知症の臨床においても聴力検査を行う必要性を提案できます。
また、従来の難聴の治療法や支援の方法が難聴のある認知症患者さんにも適用できるか、新たに調査することができます。
さらに、これらの治療法や支援方法が使えそうだということであれば、認知症の症状を軽減することに繋がります。
―聴覚の専門家と認知症の専門家がそろう新潟医療福祉大学言語聴覚学科ならではの研究ですね。最後に高校生に向けて、メッセージをお願いします!!
言語聴覚士をしている自分でさえ、難聴と認知症が強く関連するとは考えていませんでした。
医療は日々進歩しているため、勉強の連続です。
しかし、好きなことを勉強できることはとても幸せなことだと思います。
内山先生、研究内容についてわかりやすくお話しいただき、誠にありがとうございました!
内山先生の研究への熱意が伝わってくる内容でしたね!
認知症と聴覚障害の両方の領域を要する学際的な研究、
関心がある方はぜひ、内山先生のいる当学科への進学をご検討ください!!
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