こんにちは。STkouhouです。
中学校や高校までの教員と、大学教員とで最も異なる点はなんでしょう?
大学教員は授業だけでなく研究活動も重要な業務の一つである、という点かもしれません。
本学の教員もみな、それぞれの専門分野を持ち、研究活動を行っています。
ところで本学の教員が多く携わる医療系の研究には、調査や実験を要する場合が多いため、
調査用紙を用意したり、実験器具を買い揃えたりする必要があります。
他にも研究成果を発表するため、国内や海外の学会に出向くこともあるため、
それに伴う交通費や宿泊費などの費用も必要になります。
学会での研究発表の様子。
研究費用をどのように賄うか?
最も一般的な方法は、助成金を獲得することです。
助成金とは、国や地方公共団体が研究者に対し、研究に要する費用を一定額支給する制度で、原則返済不要です。
研究者は自分の研究内容を団体に申請し、審査に通りますと、助成金を得ることができます。
助成金制度は多数ありますが、最も有名なものが、科学研究費助成事業(科研費)です。
科研費で助成される金額は大きいため、助成に値する研究であるか、毎年厳しい審査が行われます。
今年度は本学科でも複数の先生方が科研費を獲得されました!
そのうちの1人、田村俊暁助教に、科研費を獲得された研究内容についてお伺いしました!!
ーこのたびは科研費獲得、おめでとうございます!
今回採択されました研究内容について、教えてください。
ありがとうございます。
今回採択された研究テーマは、
「時間的・空間的音響解析法を用いた日本語話者に適した発話評価課題の開発」です。
この研究では、神経や筋の障害によっておきる話しことばの障害、dysarthria(ディサースリアと読みます)がある方に対する、客観的な評価方法の開発を目指しています。
ーdysarthria、ディサースリアとは、医療職でないと聞きなれない言葉かもしれません。
どのような方を指すのでしょうか。
脳梗塞やパーキンソン病といった病気によって、発声や発音に障害の生じた方のことを指します。
ー発声や発音の障害は、言語聴覚士が多く携わる障害ですね。
それでは客観的な評価方法とはどのようなものなのでしょうか?
音響分析を用いた評価方法です。音響分析とは、音(話しことば)をパソコンの画面上で見たり数値化したりする技術を指します。
―話し言葉は音としてのデータだけでなく、視覚データにしたり、数値化したりすることができるのですね。
様々な形でデータ化できると、より客観的な評価を行いやすくなりますね。
この研究によって、どのような結果が望まれるのでしょうか?
dysarthria患者さんは、今まで普通に話せていたことができなくなります。
それを支援もせずに放置すれば、大切な人たちとのコミュニケーションが破綻し、社会から孤立してしまう危険性もあります。
話しことばによるコミュニケーションの回復には、適切な評価を受け、必要な治療プログラムが受けられるシステムが必要です。
しかし、現在のdysarthria の評価は、患者さんの話し言葉がどのくらい不明瞭かを、治療する者の印象によって行う方法が主流です。
この方法では評価が主観的で不安的になりやすく、治療者の経験による格差があるのが現状です.
この研究は、経験に左右されない評価法を確立することで、医療格差を少なくすることに貢献できるための最初の一歩と考えています。
―経験に左右されない評価方法が確立されますと、新人の言語聴覚士でも、話し言葉の障害の評価を行いやすくなりますね!
先生はどのようなきっかけでこの研究テーマに興味を持たれたのですか?
私が言語聴覚士になって初めて勤務した病院が、神経難病によるdysarthria患者さんが多く入院する病院でした。
そこで支援・治療をさせていただくなかで、話しことばの障害はとても複雑で、治療システムもまだ発展途上であることがわかりました。
そうした経験のなかで、この分野への興味が沸いてきました。
―先生の新人時代の臨床経験の中に、研究へのヒントがあったのですね。
最後に高校生に向けて、メッセージをお願いします!
この技術が一般に普及するにはまだまだ乗り越えなければいけない課題が沢山あります。
コミュニケーションを支援・治療することに興味をもっていただける方がいたら、
ぜひ言語聴覚士を目指し、発展させていく仲間になってくれたらとても嬉しいです!
田村先生、研究内容についてわかりやすくお話しいただき、誠にありがとうございました!
話し言葉の障害に関心のある方は、ぜひ田村先生のいる当学科への進学をご検討ください!!
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